社会人・日本人の嗜みや趣を学べる
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「啓蟄」
二十四節気は単なる季節の数え方ではなく、日本人の文化や趣向、趣を表す複雑な概念でもあります。例えば、春の真ん中に当たる「啓蟄(けいちつ)」は、三月六日ごろを指す節気です。
土の中で冬眠していた虫たちの目覚めを捉えて表現しています。七十二候では初候「蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)」、次候「桃始笑(ももはじめてさく)」、末候「菜虫化蝶(ななむしちょうとなる)」のうちの初候にあたる季節です。
寒気が鳴りをひそめ徐々に暖かい日差しが当たるこの時期は、小さな虫たちの命が活動を始める様に思いを馳せ、自然の巡りや誕生のエネルギーを感じるのにふさわしい時期となっており、自然を観察した古代の人々の注意深さや想像力に驚かされます。
春に鳴る雷は「春雷」と呼ばれ、春の季語ともなっています。この頃に虫がよく見られることから「虫出しの雷」とも呼ばれていたそうです。
「穀雨」
春の四月二十日から五月上旬にかけて「穀雨(こくう)」の節気に入ります。それぞれ「葦始生(あしはじめてじょうず)」、「霜止出苗(しもやんでなえいずる)」、「牡丹華(ぼたんはなさく)」となっています。
春の最後の節句となっており、春の雨が畑のあらゆる穀物を潤す様から名づけられました。春に雨で水をたっぷり含んだ畑は、植え付けにふさわしい状態へと仕上がります。
この時期に特別雨が多いわけではないのですが、これ以降雨の量は増えていき、穀物を育てる時期へと移り変わっていきます。天候も次第に安定していき、田植えの準備をする目安としても知られています。
「処暑」
幾分珍しいところでは「処暑(しょしょ)」があります。九月七日から二十一日ごろまでの期間で、「草露白(くさつゆしろし)」、「鶺鴒鳴(せきれいがなく)」、「玄鳥去(つばめさる)」に分かれています。
暑さが盛りを過ぎて涼しくなり始め、それまで留まっていた陽気が退き始める様を表現しています。
この時期には台風が多いと言われているものの統計的には正しくないとされていますが、急な悪天候などの心構えをするという意味合いもあり、暑さが残る気候と突然やってくる嵐への備えをさせていた概念でもありました。
農業と密接に結びついていた古代の日本では、農作被害が出ないよう小作人が手入れをする目安となっていたことでしょう。こうした概念を理解することで、一般的なお祭りや伝統行事の根底に流れる精神やその理由を理解し、思いを馳せることができるでしょう。